No Risk High Return

クライミング、サイクリング、ランニングで出会った瞬間をメモってます

ゴアトリ登れました

20/12/26
ついにゴアトリを登れました
 
2020年の年初からずっと頑張ってはいたものの、
自分のフィジカルで三段が登れるかどうか半信半疑だったので望外の出来事にすごく嬉しいです
 
ちょっと自分語りをば
 
僕がクライミングを始めたのは14年ぐらい前
山岳会に入ったのをきっかけに始めました
最初の数年間は登山の合間にフリーも、という具合でクライミングしていましたが、
いつしか登山はそっちのけでフリーばかりするようになり
目標を30代で13登ると決めてリードに行きまくりました
で、念願かなって38歳で13A(備中の大器晩成型)が登れたのが5年前
そこからヘルニアになってクライミングをやめて
ラソンを始めて、それも飽きたころ、
「一回ちゃんとボルダリングをやってみよう」
という気になったが2019年の秋42歳の時です
 
それまでもボルダリングはちょこちょこしてきましたが、
でかすぎる自分の体と硬すぎる自分の関節のため狭いムーブに対応できず、
これムリ、あれもムリ、ボルダリング向いてない
と文句ばっかり言って、ちゃんとボルダリングに向き合ってこなかったのです
 
だから御手洗の岩場に行っても、
ターターシンの岩とかハリガネムシの岩と言えば
強いお兄さん方が常に屯してる場所、とビビッていつも素通りしていました
 
2019年の秋に、甘いと噂の「喜劇(二段)」をワンディで登れて気をよくした僕は、
知り合いの甘言に誘われてゴアトリを始めました。
そしたら一発目から一手目が取れました。
いま思ったら、この一手目はそれなりにクライミングやってる人なら誰でも取れるんですが、
そのころの僕には「三段の一手目が取れた」
というのは無上の喜びでした
なんせ御手洗の二段以上のほとんどの課題は、一手目取れない、下手したらスタート体勢すら取れないで敗退していたので
 
その日は2手目も4手目も取れたので、もしかしたらもしかするかも、と大喜びしてそれから取り組むことにしました
しかし、それが地獄の始まりで、初日にできたはずの2手目も4手目もそこからぜんぜんとれなくなり
特に2手目なんかわりとガバなのにそれができなくてストレスためまくっていました
 
自己肯定感の弱い僕は、下部で落ちるのを繰り返していると、他のクライマーがいる時には気がひけて取り付けなくなります
だから人がいない条件の悪いときとかにコソ錬しにいったりしました
しかし、そもそも条件悪いから人がいないのであって、ただでさえ持てないのに条件悪いときに持てるはずもなく、、、
それでぜんぜん進まなくてほとほと自分の弱さにうんざりして、ストレスを溜める毎日でした
 
だけど「やってたらそのうち登れる、ここであきらめたら一生三段登られへん」
っていうのだけは信念としてあって、やめる気にはならなかったです
僕はフィジカルもメンタルも弱い人間ですが、強いて強さをあげれば僕の強さは執念だけです
 
2020年の夏のある日、その日もゴアトリを練習するつもりで御手洗に来たけど、
人がめっちゃ多くて、気が引けてトライできなかったのでハリガネムシ(二段)を触りました
ハリガネもだいぶ前に友達と来たときに、スタートできなかったのでこれまでは素通りしてたのですが、
この日は思いもよらず一手目が取れたのでやってみることにしました
 
それからは御手洗に行ったらハリガネとゴアトリの人の少ないほうをトライする、
というゴキブリのような週末が始まりました
とは言ってもゴアトリの岩は看板課題のターターシンもあって人気なので、
基本ハリガネをやって、ゴアトリは帰りがけにちょっと触る、というのがほとんどでした
子供のことがあるので半日しか家を空けられないので、この間はあまりゴアトリ触れませんでした
 
ハリガネは核心の飛び出しムーブが僕には絶望的な課題なんですが、
リーチムーブをやってみると、あ、これあるな、と思えたのでその練習を続けました
そのムーブも、止りそうで止らないムーブで、3日ぐらいやりましたが
3日目のあるとき、突然止りだしてそのすぐあとで登れました
たぶん全部で8日ぐらい掛かったと思います
 
ハリガネムシはだいぶ前に来たときに、僕が強いと認識していた友達もぜんぜんできそうになかったので、その時はこりゃ自分には一生ムリだと思ってましたが、それが登れてむちゃくちゃ嬉しかったです
 
で、ちょっと自信を増した僕はゴアトリに専念することにしました
条件悪いときに悪戦苦闘したからだと思いますが、
秋になって条件がよくなるとけっこう安定して三手目まで取れるようになっていました
鬼門は四手目です
普通はスタートのガバに右足をヒールかトーで引っ掛けて、
体幹で体を安定させてスタティックに取るのですが
僕にはスタートのガバが近すぎてその動きができず、下から足ブラでランジしなければいけません
このムーブには最後まで苦しめられましたが、冬になって乾燥してくるとそこだけやったら打率7割で止められるようになりました
 
そして核心の6手目のスローパー
ここの練習だけに4日掛けたと思います。
3日目に1回止まったときは興奮しすぎて視界がゆがみました
そのゆがんだ視界を今でも鮮明に覚えています
 
4日目には3回ぐらい止まったので初手から繋げてみました
でもやっぱそこだけやっても打率1割ぐらいだったのでダメでした
 
ついに登れたのはその次のトライ日です
それが暮れもせまった12/26
この日を逃したら次いつになるかわからへん
と嫁さんに懇願して、中三の受験生の息子の冬期講習の日程を変更させてまで家族全員で御手洗にやってきました
前の週からの寒波で岩には雪が積もっていました
シーズンオフなので誰もいません
子供たちはそこらで雪だるまを作ったりして楽しんでいました
 
アップ代わりに1手目から6手目までそれぞれバラシて触りましたが
最初はぜんぜん感触がよくありませんでした
4手目も止まらんし6手目の核心もあいかわらず打率1割ぐらいです
 
でもまぁぜんぶ一回づつは止めたので下からやってみることにしました
そしたら案の定4手目で吹っ飛ばされました
 
こりゃやっぱ来年の春かな?とか一人ごとをいいながら、
だけどこういうときにオレ登っちゃうんだよなぁ
と自己暗示を掛けて
もう一回下からやりました
 
入念にチョークアップしてこれからトライや!
っていうときに長男が「プリッツ地面に落ちた-」とかしょうもないこと叫んでいました
頼むからもうちょっとクライミングに興味持ってくれよ、と思いながら
「いまから登るから、登ってる最中にしょうもないこと言うなよ」と釘を刺してスタートにもぐりこみました
岩は冷たくて乾いていました
足をことさら丁寧にセットしました
これで登れたらこの時のこの感触は一生忘れへんやろうな、と思いながら一手目を出しました
2手目、3手目と進めて鬼門の4手目
思いっきり手を出しました
必要以上に力が入って、いつも以上に足がブラーと降られましたがなんとか止まりました
手の座りがよくなかったので何回かしゃくりました
5手目の左手を持ってから、もう一度右手をしゃくりました
そしたら、スコーンと体の芯になにかが入って体がむちゃくちゃ安定したような感じがしました
そして打率1割の核心の左が、止まるべくしてとして言いようのない感じで止まりました
 
あとは夢見心地でトップに向かって登りました
 
ただし、この日はトップに雪が積もっていたのでトップに直登できず途中で右に回りこんでトップに立ちました
まぁでもこっちの方がちょと手間が増えるだけなので嬉しさはかわりません
 
もちろん登れたのは嬉しかったんですが、なんでしょう?
ほんとうに心の底から嬉しかったかというと、なんかちゃいます
 
予想ではもっと嬉しくなるはずだったのですが、なんか喜んでいる自分が芝居じみているというかなんというか
もっと喜ぶべきなのになんか醒めている自分を知って、
そんな自分を鼓舞するためにわざとらしく嬉しさを増大させてそれで自分で白ける、という感じ
 
たぶん頭の中で喜んでいる自分をシミュレーションしすぎて既視感があったんでしょうね
 
よく、ずっとトライしてたルートをやっとのことで登れた人が岩の上で嬉し泣きする、
みたいな光景を見ますが、あんな風には自分は一生ならないんやろうな、とちょっと寂しくなりました
 
登れた瞬間はそんな感じで思ったような喜びが来ずに戸惑っていた僕ですが、あとからジワジワ喜びがやってきて、今は年を越して数日経っていますが、
いまだにあの瞬間瞬間を思い出すと顔がほころびます
 
そしてこれからもことあるごとにあの瞬間を思い出しては、アレは最高やったなぁとほくそ笑むんだと思います
 
いやぁクライミングやっててよかった
まったく幸せな野郎だぜオレは
 
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四手目

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六手目
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ゆきだるま