そうめんの思い出
好きな女性の家に行ってそうめんを食べさせてもらったことがある。
田舎からそうめんを送ってきたから一緒に食べようと誘ってくれたのだ。
僕は、生姜チューブとワサビチューブを持って自転車に乗って喜びいさんで彼女の家に行った。
そうめんにはワサビと決めている僕だが、世間にはそうめんに生姜を合わせる人がいることを知っていたので、念のために両方買っていったのだ。
僕が麺ツユの中にワサビを入れてグルグルしていると、彼女は迷わず生姜チューブを手にとり、彼女の麺ツユの中にニュニュっと搾り出した。
その時、僕は心の底からこう思った。
両方買ってきてよかった。
彼女の故郷のそうめんは、僕がいつも食べている三輪そうめんよりも細くて、茹ですぎてもいないし、伸びてもいないのに、ちょっと口の中でもごもごするように僕には感じられた。
「とてもおいしいよ」と僕は言った。
「それはよかったです」と彼女は言った。